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川上正浩ブログ

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読書三昧 の記事

読書を勧める(13)

 前回の「読書を勧める」から既に一年以上経ってしまった。
 久々のお勧め本は…
 
歩祐作著 「ティーンズライフ」 講談社BOX
 
 第12回講談社BOX新人賞“Powers”受賞作である。
 青春小説,と書いてしまえば簡潔に過ぎるだろうが,甘酸っぱい物語である。
 “夢”と“脆さ”の物語である。
 こういう本については,内容についてあまり詳細に紹介することは避けたいと思うので,是非読んでみていただきたい。
 ただ,表現については,川上に響いたものをいくつか抜粋して紹介させていただきたい。
 
 
「少し相談がね」
角砂糖をつまむような指の形を作って,ちょっと,とジェスチャー。
 
「とんでもないです」僕はぶんぶんと風力発電できそうなくらいに首を振る。
 
「恋。ラブ。ボキャブラリー」
「最後のは違う」
 
「親身になっておとなのお姉さんとしてのアドヴァイスをあげるよ?」
「親なのか姉なのかはっきりして。あと変な発音しないで」
 
「俺,そんなに顔に出るかな」
「出る出る。油性マジックで書いてあるもん」
 
 
 まぁ川上の好みの問題なのであるが,とにかく会話のテンポの良い作品であり,こういうの,すごく好きなんである。
 
ところで,
 
「なんで“おっさん”が今更『ティーンズライフ』?」
 
 と訝っておられる方も多いと思うのでバラしておくが,実はこの本の著者(現在大学一年生だそうである)は,川上の大学時代からの友人のご子息なのである。
 献本していただいちゃったのだ☆(最初はその友人自身の教育学系の著書が送られて来たのかと思って包みを開いたのであるが)
 が,そうしたことを抜きにしても,本当にお勧めであるので是非手にとってみていただきたい(しかも実におしゃれな本なのである)。
 甘酸っぱい,爽やかな,そしてほっこりした気持ちになれること請け合いである。
 まぁ川上にそういう路線を勧められても気持ち悪い?…って話ですけど。
 

読書を勧める(12)

 先回のブログ(「読書を勧める(11)」で,アシモフの著書を紹介したのだが,折角ならアシモフの小説も紹介しておこうと思った次第。
 どこかで書いたような気がするが,推理小説好きであるので,ミステリ色の強い,SF色の薄い作品をお勧め。
 
アイザック・アシモフ著 「黒後家蜘蛛の会 1〜5」 創元推理文庫
 
 個人的には,創元推理文庫には基本的信頼を置いているのである(創元推理文庫がどう思っているのかはわからないので相互信頼ではないだろう。心理学者としてはここからattachment,すなわち愛着の理論に話を持っていっても良いのだが,ここではこれ以上展開しない)。
 
 で,そのお話はというと…
 
 弁護士や画家,化学者といったさまざまな業界の専門家6人が,月一でレストランに集う「黒後家蜘蛛の会」。
 ここでは毎月のゲスト(メンバの誰かが連れてくるのだ)が,自ら体験したミステリアスなできごとを紹介する(いわゆる連作ものなのである)。
 メンバがそのできごとの真相を,ああでもないこうでもないとつつき回すのだが,鮮やかな解答を見つけ出すのは,黒後家蜘蛛の会7人目のメンバ,会場であるレストランの給仕であるヘンリーなのだ。
 まぁいわゆる安楽椅子ものであるが(書いていて思ったのだが,少し前に本屋なんとかで話題になった某作品と構造が似ているかもしれませんね。そちらを未読なので曖昧ですが…),ミステリとしてもさることながら,その場の会話の雰囲気がなんとも言えず良い,というか楽しいのである。
 ということで,これも随分と古い本ではあるのだがお勧めしたい。
 うーん,やっぱり知的に遊びたいのだなぁ,って話ですけど。

読書を勧める(11)

 世の中は役に立つことと役に立たないこととでできている。
 俗に言う雑学というやつは,基本的には後者であるので“雑”などという字を使われているわけである。
 
 しかし,である。
 こうした俗に言う雑学が,思わぬ発想のヒントになるのが,研究者業界であり,こうした俗に言う雑学が,授業の小ネタとして有効に働いたりするのが教育者業界である。
 ということで,本日のお勧め本。
 結構古い本なのだが,
 
アシモフ著 「アシモフの雑学コレクション」 新潮文庫
 
 何と言ってもアシモフである(「なんてったってアシモフ」と書こうと思ったが,今時元ネタがわからない人が続出だと思うので自重した)。
 アイザック・アシモフ。
 野暮な解説は止すが,個人的には“知の人”としてリスペクトしている。
 しかも。
 この翻訳は星新一氏の手によるものである。
 面白くないはずがないではないか。
 (星新一氏についても,野暮な解説は止すが,個人的にはこの人も“知の人” としてリスペクトしている)
 
 たとえば,こんなの。
 
「ゆり椅子の発明者は,ベンジャミン・フランクリン」
 
 まぁこうした文章で翻訳がどうのこうの,というなかれ,という方もおられるかもしれないけれど,まさに簡にして要,というところである。
 
 ということで,時間の空いた研究者,教育者諸氏にお勧めである。
 って,このご時世に研究者,教育者は時間空いてない,って話ですけど。
 

読書を勧める(10)

 さて。
 予告の通り,最近読んだプレゼンテーションに関する本を紹介したい。
 
ガー・レイノルズ 著 「プレゼンテーションzenデザイン あなたのプレゼンを強化するデザインの原則とテクニック」 ピアソン・エデュケーション
 
 どうやらシリーズものらしく,「プレゼンテーションzen」というのが以前に刊行されているようだ。
 内容については,あまり紹介するわけにはいかないと思うのだが,自分なりにまとめるとすれば「大胆に,そしてシンプルに」ということなのだろう。
 この本を読んでいて,意を強くする部分と,反省する部分とがあった。
 たとえばフォントの使い方に関して言えば,これまでどうしても過装飾になってしまっており,その点については反省したので,意識して少しシンプルにしているつもりである。
 最近のプレゼンをご覧になった方は,ひょっとしたらお気づきかもしれないが。
 人間いろいろな機能があれば,ついつい使いたくなってしまうものであり(たとえば画面切り換え時のエフェクトとか),自身も多分にそういうところがあったわけであるが,抑制すべきところを抑制することが,むしろ効果を持つ場合があると,たくさんの綺麗な実例を見せられて納得した次第である。
 
 さらに,この本に関して言えば,例示の画面として呈示されているプレゼンテーションの多くが,Apple社のプレゼンテーションソフト「keynote」で作成されたものであり(著者はどうやらAppleとゆかりのある人らしい),同じソフトを使用している身としては,直接的に参考になる感じが強い。
 keynoteを使い始めてからというもの,powerpointを使用することがめっきり減ってしまっているのだが,世間の大勢は明らかにpowerpointに傾いているわけで,そうした中で出会ったこの本は,誠にありがたいものであった。
 
 ともあれ,ただただ眺めるだけでも随分と美しい本であり,あまり堅苦しく「プレゼンとは…」と考えてもらわなくても良いのかもしれない。
 
 まぁ,効果の程は,この本を参考にした川上先生のプレゼンを見てから…ということになるのかもしれないので,なんというかこれからのプレゼンに微妙な責任感のようなものが伴って…って話ですけど。 

読書を勧める(9)

 今回は少し学術的なお勧め本を。
 学術的と言っても,専門書ではない。
 専門書は往々にして「知識を蓄える」ことを目的としているが,個人的に考える「学術的な本」とは,「考え方をブラッシュアップする」ことを目的としている(もちろん単に「結果として」,という場合もあるが)ものである。
 ということで,本日のお勧め。
 
福岡伸一 著 「世界は分けてもわからない」 講談社現代新書
 
 この本がどのくらい売れているのかわからないので,わざわざここでお勧めする必要があるのかどうかわからないが,同じ著者の前著(だと思う)である「生物と無生物のあいだ」はベストセラーだったはずなので,ご存じの方も多いかもしれない。
 
 「生物と無生物のあいだ」もそうであったが,この人の文章を読んでいると,内容はきわめて理系的でありながら,ものすごく文系的な文章であると感じる。
 ちょっとうまいこと言えば「理系と文系のあいだ」という感じ。
 個人的には,学問領域についてはともかく,人間を文系・理系と区別すること自体をあまり好きではないので,こういう人の文章を読むと楽しくなる。
 
 さて,本書の内容についても少し触れておこう。
 まるで“ゲシュタルト心理学”の教科書のようなタイトルであるが,もちろんそういう本ではない。
 
 しかし,
 
「私たちは見ようと思うものしか見ることができない。そして見たと思っていることも,ある意味ですべてが空目なのである」(p.163)
 
というような文章に出会うと,それがまさに「認知心理学」の授業の中で自分が力説している内容そのものであることに驚かされる。
 
 自分なりに解釈すれば,この本は,人間の「認識のしかた」についての本である。
 もちろんいわゆる“専門的な”内容も随分と含まれているので,やや歯ごたえを感じる部分もあるかもしれないが,心理学を学ぶ学生さんにも,「認識のしかた」について捉え直す意味で,読んでもらえればと思う。
 著者の専門は分子生物学であり,心理学とは少し距離があるのかもしれないが,結局学問領域の違いというのは視点の違いに過ぎない。
 まさに「世界は分けないことにはわからない。しかし分けてもほんとうにわかったことにはならない。」(p.163)のである。
 
 あ,もう少しで「って話ですけど。」って付けるの忘れて終わるところだった,って話ですけど。
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