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川上正浩ブログ

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悪霊が中断される

 江戸川乱歩氏は「悪霊」という作品の結末を思いつくことができず、紙面で読者に謝罪したことがある,という話を聞いた。
 この「悪霊」という作品は,推理小説誌「新青年」に,1933年から3ヶ月に渡って連載されたものの,結局,未完となってしまったとのこと。
 3ヶ月の連載ののち,2ヶ月の休載期間を挟んで,1934年4月の「新青年」には,乱歩氏から読者に対しての「お詫び」が掲載された。
 曰く,「失敗のひとつの理由は,種々の事情の為に,全体の筋立ての未熟のまま,執筆を始めた点にもあったと思いますが,抜け殻同然の文章を羅列するに堪えませんので、ここに作者としての無力を告白して,『悪霊』の執筆をひとまず中絶することに致しました」との詫び状であった。
 こうして乱歩氏の連載は中断され,そして中断されたまま,この作品の掲載が再開されることなく,乱歩氏が亡くなってしまったため,作品は未完のまま,ということになった。
 考えてみるに,研究者である我々にとっても,これに類したことはいくつも起こっている。
 仮説を思いついて,実験してみたものの,結局思わしい結果が得られず,お蔵入りとなってしまったデータなども山ほどあるし,場合によっては,実験の遂行まで至らなかったものもそこそこにある。
 こうしたことが,研究倫理の話としても大切な話であるのはもちろんだし,科学の進歩とは,という話としても大切な話である。
 どのようなデータがこれまでに発表されてきたのか,ということを問うのは,なんだか問うてはいけない問いと問うているような気がするのである。
 なんだか悪霊から随分離れてしまったが,結局「怖い話」に戻ってくるみたいな展開になってしまった。
 研究の闇にも触れた方が良いのか?って話ですけど。

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