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川上正浩ブログ

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咀嚼の音を...(3)

 ということで,単なる本数稼ぎに見えるかもしれないが,仕切り直してイナバウアーの話である。
 そもそもイナバウアーとは2006年の流行語大賞にもなった,フィギュアスケート,荒川静香選手の持ち技である。
 2006年のトリノオリンピックで大活躍した荒川静香選手とともに,その得意技であるイナバウアーも大変有名になり,荒川静香選手の姿勢を真似て,大きく背を反らせながら,「イナバウアー!」などと叫ぶ子ども(や大人)が当時はよく見られたものである(遠い目)。
 ところが,である。
 まずそもそも,「イナバウアー」というのは1950年台のフィギュアスケート選手,イナ・バウアー=ツェーネス氏に由来する技の名前である。
 当時「イナバウアー!」などと叫ぶ子ども(や大人)が,このイナ・バウアー=ツェーネス選手に想いを馳せていたか否かは知る由もないが,それはそれでこの話とはあまり関係がない。
 ともあれ,このイナ・バウアー=ツェーネス選手に由来する,荒川静香選手の得意技がいわゆるイナバウアーであるのだ。
 そして,イナ・バウアー=ツェーネス選手に想いを馳せていたか否かはともかく,おそらく当時「イナバウアー!」などと叫ぶ子ども(や大人)は,イナバウアーというのは,背中を大きく反らせる(反らせながら滑る)技であると理解していたと思われる。
 ところがどっこい。
 実は荒川静香選手が得意としていたイナバウアーは,正確には「レイバック・イナバウアー」と呼ばれる技なのであり,その特徴とも言える,背中を大きく反らせる姿勢は,この「レイバック・イナバウアー」の,「レイバック」の部分なのである。
 では,「イナバウアー」の部分は何かと言えば,スケーティングにおける足の姿勢?の話であり,足を前後に開いて,爪先を180度開いて真横に滑る技が,イナ・バウアー=ツェーネス選手に由来する,「イナバウアー」と名付けられた技なのである。
 当然のことながら,荒川静香選手の得意技はレイバック・イナバウアーであるので,背中を大きく反らし(レイバック),かつ,爪先を180度開いて真横に滑って(イナバウアー)おられるわけである。
 だからこそのレイバック・イナバウアーなのだ。
 しかし,当時の観戦者たち(もちろん,素人の)は,この技が,「出ました!荒川静香のイナバウアー」などと実況された際に(ここで,ちゃんと「レイバック・イナバウアー」という呼称が一般的に使われていたのならば,事態は少し変わっていたかもしれないが),あまりに目立つ大きく反らした背中に注目し,あまり目立たない(ということもないのかもしれないが)爪先には注目できず,勝手に,「あぁ,イナバウアーっていうのは,背中を反らして滑ることなんだな」と思い込んでしまった節がある。
 念のため,ここで言いたいのは,それが良いとか悪いとかの話ではない。
 こうした顕著性のようなもののために,誤解というのが「一般的に」(これは,一般論として,という意味と,一般大衆を対象として,という意味の両方であるが)起こってしまう,ということが,実に興味深いなぁと思うわけである。
 ということで,最終的には咀嚼音と全然関係なくなっちゃった(ハライチ風)って話ですけど。

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