ということで,先回のブログ(「咀嚼の音を...(1)」)に続き,ASMRの話である。
あらためて,ASMRは,「Autonomous Sensory Meridian Response」の略であり,なんとか日本語に訳せば,「自律性感覚絶頂反応」とでもなるだろうか。
そう,ポイントはそこなのである。
先回のブログでも触れたように,たとえば,「咀嚼音」みたいなものを,ASMRと呼んでおられる方が結構多い(川上調べ)みたいなことが気になっているのだ。
原語を見ていただければわかると思うのだが,ASMRとは,「反応」のことなのである。
つまり,咀嚼音などを聞いた時に起こる,我々の反応のことをASMRと呼ぶのである。
もう少し言えば,ある種の刺激に対して,ある種の反応が起こるという話は,心理学ではよく聞かれる話である。
つまり,咀嚼音などの刺激が,ASMRと呼ばれる反応を引き起こしているわけであるのだ。
件の,とあるタレントさんの,「私のASMRをお聞きいただいて...」みたいなコメントがなぜ気になったのかと言えば,これは,反応ではなく,その刺激そのものをASMRと呼んでいるように感じられたからなのである。
実は,これに極めて近いことを,川上は授業でも話すことがある。
それは,「ストレス」に関する話。
日常会話などで,「もう,ほんっとに,あの部長が私のストレスなのよ」などという言い方が聞かれることがある。
しかし,である。
先程の話をご理解いただいた方にはなるほどと思っていただけるだろうが,ストレスというのは,そもそも我々が受ける,反応のことである。
心理学では,ヒトにストレスを与える原因,つまり,刺激そのものを「ストレッサー」と呼ぶことになっている。
こうしたことから言えば,厳密には先のセリフは,「もう,ほんっとに,あの部長が私のストレッサーなのよ」,と言うべきである,ということなのだ。
こうした,ある意味で不正確なタームの使用というのは,まぁよく起こるのだ,ということである。
イナバウアーしかり,である。
え,イナバウアー知らない?
しょうがないなぁ,では,次回,イナバウアーのお話を,って話ですけど。