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川上正浩ブログ

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女房の言葉を語る(3)

 さて先回のブログ(「女房の言葉を語る(2)」)の続きである。
 実は今回の話は女房言葉とは関係ないのであるが,まぁ流れ上,その3ということでお送りする。
 で,むしろ唐突なのであるが,次の歌をご存知だろうか。

ふたつもじ うしのつのもじ すぐなもじ ゆがみもじとぞ きみはおぼゆる

 徒然草にある,幼い延政門院が詠んだという歌である。
 最後の「きみはおぼゆる」は,「あなたのことをそう思っています」という程度に理解してもらえば良いと思うが,問題は前半である。
 知っておられる方には,なんということもないかと思うが,前半はある言葉を表す,いわば暗号(謎かけ)になっているのだ。
 ご存知ない方は,しばらくスクロールせず,どういう意味の歌であるのか,一度考えてみていただきたい。

 さて,種明かしである。

 先の歌の中の,
 ふたつもじは,二つの画でできる文字である「こ」,
 うしのつのもじは,牛の角のような形をした「い」,
 すぐなもじは,真っ直ぐな文字である「し」,
 ゆがみもじは,途中で歪んだ文字である「く」,

 をそれぞれ表しているのだ。
 つまり,あなたを「こいしく」思うという歌なのである。

 この歌では,一個一個の文字を婉曲的に表現することによってメッセージを構成しているわけだ。
 作者が幼い少女であることを考えると,婉曲的表現というよりは「なぞなぞ」に近い気がする。
 そして,たまたま,という言い方は変だが,「む」とか「ね」みたいな文字を含むメッセージではないからこそ表現しえたとも考えられるが,ともあれ,とてもよくできていると思う(どこから目線か)。
 さらに言えば,これが言語の面白さであるとも思う。
 文字が文字としての形態を持ち,そして,それが音韻を持ち,最終的にはそこから意味が抽出される。
 この歌は,そのプロセスが集約されているように思えるのである。
 少なくとも自分では,専門とする研究領域は言語情報の処理過程であると思っているので,ついついこうした感想になってしまう。
 が,まぁ,単なるなぞなぞとしても,もちろん面白いし,あるいはそこに奥ゆかしさを感じるのもアリだと思う。
 文学なのだから,その楽しみ方は様々なのだ。


 うーん,なんか落とし所が予想の斜め上,って話ですけど。

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