身近に感じる

 某ファーストフード店でアルバイトをしていたある学生さんから,こんな話を聴いた。
 
 その日彼女が乗っていた電車は,そこそこの混み具合で座席に空きはなく,仕方がないので彼女はドア付近に立っていたそうだ。
 眺めるともなくドアの外を流れる風景をボーッと眺めている彼女。
 電車は駅に着き,プシューッとドアが開く。
 ボーッとしていたところをハッと我に返った彼女は,開くドアに向かって思わず
 
「いらっしゃいませ!」
 
 と声をかけてしまった。
 
 という話である。
 
 こういうのも一種の条件付けと呼んでも良いかもしれない。
 
 
 最近,とある授業で,学習心理学,特に条件付けの話題を取り上げているのであるが,この領域の話は,学生さん達にとっては,随分と“身近”に感じられるらしく,授業後の感想用紙にも,そうした内容が結構たくさん書かれている。
 
 心理学の魅力の1つは,そうした“身近さ“であると思う。
 様々な学問の中で,心理学は,「あぁそうそう!」とか「あるある!」と思えることが多い部類に入るだろう。
 理論として言われていることを実感できる学問というのは,そう多くないと思う。
 たとえば,化学の法則として,「ル‐シャトリエの法則[Le Chatelier's law]:可逆反応が平衡状態にある時,外部から平衡を決定する条件(温度,圧力,濃度)を変化させると,その変化による影響を打ち消す方向に平衡が移動するという法則。ル‐シャトリエ‐ブラウンの法則とも言われる。1884年,ル‐シャトリエが提唱し,1887年ドイツのK.F.ブラウンが発展させた」という法則があるのだ,と言われても,それを「あぁそうそう!」と納得できる人は少ないだろう。
 そうした点においては,心理学は教育場面においては,ある意味“有利”な学問であると言えるかもしれない。
 
 しかし,もちろん心理学の中にも“ピンと来ない”領域はある。
 たとえば大脳半球機能差の研究などは,とても「あるあるあるっ」の世界にはならない。
 脳の右半球と左半球では機能の分担がなされており,ある刺激を右の視野に呈示する(余計なことであるが,「右視野に呈示する」ということと「右目で見る」ということを混同している人が時々いるが,これらは全く別のことである)場合と左視野に呈示する場合とでその処理の速度が異なる,などということを日常「そうそうそうっ!」と実感している人は,まずいないだろう。
 
 で,実はそうした辺りこそ,心理学の本当に面白いところだと思われるわけで,必ずしも“実感できる”ことばかりで話は完結しないのである。
 もちろん,実感できる部分については実感してもらった方が良いわけで,実感そのものを否定しているわけではないが,そこばかりに留まってもらうのも…というところである。
 ま,その辺り,続きは授業で…って話ですけど。

コメント (2)

死神:

身近に感じることができる内容の講義であれば,非常に興味を持って
きくことができると思います(#^.^#)

川上先生が開かれている講義で,“あるある!”と思うことができる講義
をたくさん受けて,自分のものにしていけたらいいなぁと,考えています☆

                       川上先生のことが好きな死神より

川上:

コメントありがとうございます。

そうですね。もちろんできるだけ身近に感じられるような
講義を展開していきたいと常々心がけています。

てことで,やっぱり続きは授業で…って話ですけど。

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