先日,少年鑑別所で所長さんのお話をうかがう機会をもてた。
以前にも少しブログ(「後輩に感謝する」)で触れたことのある,「心理学の現場」という授業の学外授業であった。
鑑別というのは基本的にはアセスメントであるというお話を聴いて,なるほどと思った。
そして,所長さんのお話では,こういう仕事に就くのに,必ずしも臨床心理学を専門的に勉強している必要はなく,むしろ心理学の基礎をしっかりやっておくことが重要である,とのことであった。
「必要なときに必要なことを学べばよい。要はそのときに学ぶことができる力を身につけておいて欲しい」と学生さん達に伝えていただいた。
心理学というのは,そもそもそういう学問であると思っていたので非常に腑に落ちた。
そういう,と言われてもどういうかわかりにくいかと思うので,以下に少し説明してみたい。
つまり,心理学は,人の心(あるいは行動)に関する学問であるが,単に人の心(あるいは行動)に関する知識を蓄える学問ではない。
たとえば,ここ数年の携帯電話の普及は(と言うのも恥ずかしいほどに普及しきった感があるが),人の心に大きな変化をもたらしたと思われる。
しかし,心理学は,その携帯電話の普及が,人の心(あるいは行動)にどのような影響を及ぼすかを予測できるだけの万全の知識をあらかじめ有していたわけではないだろう。
つまり,新しい社会の動きに対応する人の心(あるいは行動)について,必ずしも心理学が“予言”できるわけではない。
けれども。
心理学は,新しい社会の動き,たとえば携帯電話の普及に伴って,人の心(あるいは行動)がどのような影響を受けているのかを調べる“術(すべ)”を持っているのだ。
だからこそ,どのような社会の動きがあったとしても,それによって 人の心(あるいは行動)が受ける影響について,これまでの学問体系に合わせる形で調査,実験ができ(もちろんその社会の動きによっては,方法に随分と工夫が必要になる場合もあるだろうが),その結果をまとめ上げて,新しい“知識”を創造する力を持っているのである。
チョムスキーの変形生成文法の考え方に少し近いかも知れないが。
もちろん,現在の心理学の学問体系(枠組み)が完全なモノであるとの保証はないわけであるから,,パラダイムシフトが必要になる時が来るかもしれないが,いずれにしても,現段階では,心理学は,そうした新しい知識を生成するノウハウは有しているのだと考えられる。
そして,そういう「心理学の知識を生成するためのノウハウ」こそが,(心理学を学んだ)学生さんに身につけて卒業して欲しいと願っているものであるのだ。
だから,学生さん達には,心理学の知識を身につけて欲しいのはもちろんだが,それよりも,知識を生成するための力を育んでいけたら,と思っている。
なんだかまた急にまじめな話になってしまって恐縮だが(恐縮する必要があるのかどうかもよくわからないが),まぁそんなことを思いながら授業をやっているわけである。
ブログにしてはやっぱり堅すぎるんじゃ…って話ですけど。
コメント (3)
「生成する力を育む」というのは,なんとなくわかった気がするのですが,
今回のお話は,文章が堅すぎましたね(+_+)
申し訳ありませんが,内容がほとんどわかりませんでした。。。
もっと,勉強すべきなのでしょうか…。。。
川上先生のことが好きな死神より
投稿者: 死神 | 2010年2月20日 21:47
日時: 2010年2月20日 21:47
>心理学は,新しい社会の動き,たとえば携帯電話の普及に伴って,人の心(あるいは行動)がどのような影響を受けているのかを調べる“術(すべ)”を持っているのだ。
統制群が作れないためにこれがなかなか難しいということも知っている…。どしたらよか?
投稿者: カタコリトド | 2010年2月22日 11:44
日時: 2010年2月22日 11:44
皆様コメントありがとうございます。
今回は内容がかなり専門よりでしたね。
さて,その上でカタコリトドさんのコメントについてですが,これは
確かに難しいですね。ただ,この場合で言えば,「携帯電話についてどう認知しているのか」については,統制条件を考えることなく検討することができる
領域になるかと思いますね。「携帯電話が生活をどう変えたか」といった議論に
なると,これは統制条件の問題が出てくるはずです。ともあれ,問題の切り分けが
ポイントということでしょうか。あんまり答えになっていなくてすみません。
どう考えてもこんなところで議論するような問題ではありませんけど。。。
投稿者: 川上 | 2010年2月23日 19:11
日時: 2010年2月23日 19:11