対訳を考える

 またまた運送会社の話で恐縮だが(別段恐縮することもないかもしれないが),先日,別の運送会社のトラックをまたまた見かけた。

 今度は「こまどり便」と書いてあった。

 少し考えて,一人心の中でニヤけてしまったのだが,何がポイントだかおわかりだろうか?

 たぶんわかってもらえないだろうという自信(?)があるので,以下にその思考の流れを書き起こしてみる。

 

 

 「こまどり便」って……今,コマドリのイメージを明確に持てる人ってどのくらいいるんだろう。

 年配の人の中には「こまどり姉妹」のイメージを持てる人ならいるかもしれないけれど。

 『おねぇさんのぉ~』みたいな。

 どうせなら,今風に英語にすれば良いんじゃない?

 

 「ロビン便」

 

 ろびんびん……ダメだこりゃ。

 

 

 という具合である(何が具合なのかよくわからないが)。

 

 で,まぁそんな話はどうでも良いし,こうしたセンス(?)が必ずしも多くの人にわかってもらえると思っているわけでもないが,ちょっと実験心理学の話と関連するので少し書いておきたいと思った次第である。

 

 ここから先はまじめな話。

 

 心理学の領域では(に限らないかもしれないが,この領域しか知らないので),欧米での実験が先行して行われて,その後,そうした実験や研究が日本に輸入されることが多い。

 たとえば欧米で, “bird” をプライムとして呈示し,その後 “robin” をターゲットとして呈示する,なんていうプライミングの実験が行われたとする。

 プライミングとは,先行する(つまり先に目にしたり耳にしたりする)情報(これをプライムと称する)を処理することによって,後続する(つまりその後で目にしたり耳にしたり)情報(これをターゲットと称する)の処理が,促進されたり(つまり速くなったり)抑制されたり(つまり遅くなったり)する現象のことである。

 先の例の場合だと, “bird” と意味的な関連を持つ “robin” の処理が促進されるというわけである。

 で,その現象そのものは,ここではどうでも良いのであるが(どうでもええんかい!),問題はこうした現象を解説しようとする場合,日本(語)では,「たとえばをプライムとして呈示し,その後コマドリをターゲットとして呈示すると」なんてことになってしまうということである。

 何が言いたいのかというと,それではわかりにくいんではないの?という話である。

 “bird” が日本語で言えばであるように,“robin” が日本語で言えばコマドリであることは間違いない。

 これは,鯨が魚でないのは馬が魚でないのと同じだ,と同じであるが(違うような気もする),問題は,この英語圏での実験は,欧米で “robin(こまどり)が,馴染み深い野鳥であることと密接に関連しているはずだということである。

 つまり, “robin” について論じられていることをコマドリに置き換えて論じることは,訳としては正しいのであるが,意味としては,微妙に異なって伝わる可能性があるということである。

 この場合で言えば, “robin” の部分は,敢えてスズメとでも訳す方が,その意味は伝わりやすいのかもしれない(まったく関係無いが,「スズメ百までワシゃ九十九まで」というフレーズが結構気に入っている)。

 それは,欧米における “robin” の位置づけと近い日本の鳥は,コマドリよりもむしろスズメであると想像されるからである。

 敢えて言葉を重ねるならば,この場合,原語を,一度文脈の中の位置づけという形で解釈しておいて,その上で,その位置づけにある訳語に変換する,という作業が必要なのでは,という話である。

 横道が多かったので文意が通じにくかったかもしれないが,要はそういう話である。

 

 うーん,そういう話ってどういう話やって話ですけど。


コメント (3)

死神:

「こまどり便」……、聞いたことも見たこともない運送会社ですねぇ~(・.・;)
どこか、限られた地方の運送会社なのでしょうか?

今回の、真面目な話のほうは、難しくてなんだかよく解らなかったので、放っておきます。。。

            川上先生のことが好きな死神より

川上:

コメントありがとうございます。
そうですね。私も初めて見ました。見たのは大学の近くで
ありましたが…。

死神:

大学の近くで見たのですかぁ。
では、大学周辺を徘徊して、「こまどり便」を探してみましょうか(^u^)
いや…、この場合、徘徊とは言いませんね。。。徘徊とは、あてもなく
歩き回ることですから…。。。でも、死神的には徘徊という言葉がお似
合い(?)なのですが…。。。

うぅ~ん、簡単に前回の「ペガサス」も今回の「こまどり」も見つけたい
ですねぇ。
なかなか、難しいかもしれませんが…(・.・;)

            川上先生のことが好きな死神より

コメントを投稿

(ご投稿いただいたコメントが投稿されるまでに、ブログオーナーの承認が必要です。しばらくお待ちください。)

サイト全体の最新記事を取得
RSS2.0フィード最新記事を取得
ATOM1.0フィード最新記事を取得
『川上正浩ブログ』の最新記事を取得
RSS2.0フィード最新記事を取得
ATOM1.0フィード最新記事を取得
[フィード(RSS)とは]