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濃厚が理不尽に感じられる

 とあるホルモン屋さんに入った。

 ホルモンに詳しいわけでもないので,メニューを見ながら,「ほぅ,さすがにいろいろな部位があるものだなぁ」などと思っていた。

 メニューにはそれぞれ具体的な部位の情報と,その呼び名,そして「どんなふうか?」というようなアドバイスというかキャッチコピー(たとえば「淡泊な味なのでとても食べやすい」とか)が書かれていた。

 そんなキャッチコピーの中に,気になるフレーズを見つけた。

 

 

「歯ごたえとクセのない濃厚な味わい」

 

 

 …。

 個人的にはこれだけのフレーズの中に突っ込みどころ満載である。

 まず,歯ごたえはあるのかないのか,はっきりしてもらいたい(もちろんあるとアピールしているのであろうことは推測できるが)。

 逆に言えば,普通はこれをサラリと理解できるのであるから,人間が厳密に文構造のすべての可能性を検討するなんて七面倒なことをしていないことがわかる。

 さて,「歯ごたえ」と「クセ」が並列されているのでない(つまり「歯ごたえ」は「ない」に係らない)ことがわかったとすると,本来なら次の可能性は「歯ごたえ」と「クセのない」が並列されて,「濃厚な味わい」に係るというような構造であろうが,ここではそうもいかなさそうである。

 それは「歯ごたえ」が名詞であるのに対して「クセのない」が形容詞(句)であるからであり,そうだとすると,これは「歯ごたえ」と長々と形容された「味わい」とが並列されているらしいことがやっとわかる。

 しかし,書いておいてアレだが,そしてくどいようだが,人間はそんな七面倒くさいことはやってないはずである。

 ガーデンパス文とまでは言わないが,構造的には多義的な文であると思う。

 

 ここまでは構造に関しての話であるが,個人的に,もっと問題だと思われるのは,実は「クセのない」と「濃厚な」が並列されていることである。

 「ベクトルとしてどちらを向いているのかはわかりませんが,長いですよ」みたいに聞こえるフレーズである。

 つまり,どっちの方向に行くのか定まっていない(というより,「どっちの方向にも向かっていませんよ」というのが「クセのない」ということだと理解できる)のに,すごいとこまで行ってますよ(というより,「そっちの方向をずいぶん極めましたよ」という感じが「濃厚」ということだと理解できる)というようなものであろう。

 だいたい「クセのない」というフレーズで始まる20答法を実施したら(しないけど),8割方の人は「あっさりした○○」とか続けてしまうはずである。

 

 などなどと話しながら,楽しくホルモンが食べられたことは間違いないので,そういう意味ではこのキャッチコピーに対する最終的な評価はポジティブである。

 本当はこのお店,もう1つ気になるキャッチコピーがあったのであるが,理屈を捏ね回して疲れたので,本日はこの辺で。

 また次回にでも続編をお送りしたいと思う。

 ちなみに,「歯ごたえとクセのない濃厚な味わい」がウリなのは,豚アゴという部位であるので,興味のある方は,お味を確かめてみていただきたい。

 え,結局食べてないの?って話ですけど。


コメント (4)

死神:

毎回、“よく、これだけネタを見つけ出せるなぁ。”と思ってしまいます(●^o^●)笑
確かに、「クセのない」と「濃厚」が同時に使われるのは変ですね。

先生方が、楽しくホルモンを食べられたことは、よかったというか、安心しました(^。^)y
永遠にこのことについて議論をしていたら、少し奇妙なお客だなと感じたので(・.・;) (微笑)

是非、続編をおききしたいです(#^.^#)

川上:

コメントありがとうございます。
ほんと,こんなことばっかり考えて生活しているみたいですねf(^ ^;;
概ね外れてはいませんけれど。
ともあれ楽しくホルモンが食べられたことは間違いありません。結局豚アゴは
食べてないですけど。

しのぷー:

久々にコメントします(>_

私の中では、今回のフレーズのポイントは“クセのない”だと思います!

まず、多くの人が「ホルモンは臭みがある」と思っていそうなので、お店としては、そこを払拭したい。

次に、ホルモンを食べる多くの人は「歯ごたえ」を求めてそうなので、そこは外せない(気がします…)。


“臭みがなく、あっさりと歯ごたえが良い”

↑これがホルモンの醍醐味とすると…


それを覆す、ホルモンでも焼き肉みたいにガツンと味の濃いものが食べれる!

となれば新たな客層=若者の集客ができる!

じゃあ「豚肉=濃厚」なイメージ。所謂、豚トロですねw

というわけで繋げて出来たのが今回のフレーズ…


かどうかはわかりませんが(笑)

どうせなら…

“クセがなく歯ごたえ抜群!なのに濃厚!絶品ホルモン!”

とか(笑)
長いですねwww

川上:

久々のコメントありがとうございます。
そしてキャッチコピーのご提案,ありがとうございます。
確かに,“なのに”という言葉で,逆説的であることを明示することにより,
コピーとしてのまとまりは良くなったと思います(誰?)。
ただ,ビックリマーク使いすぎですねf(^ ^;;。

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