読書を勧める(7)

 「本来私は「否定派」ではなく,「懐疑派」である。」

 

 いきなり引用からスタートしたのであるが,これが今回お勧めしようとしている本の著者,松尾貴史氏の立場である。

 これ,何に対する態度かと言えば,オカルトに対する態度である。

 

 ということで,今回のお勧めは,

 

松尾貴史著 「なぜ宇宙人は地球に来ない? 笑う超常現象入門」 PHP新書

 

である。

 

 不思議現象を研究していることもあり(というか,この辺りはニワトリが先かタマゴが先かという感もあるが),オカルトとそれを信じること,そしてそれを疑うことには興味がある。

 オカルトや宗教に限らず,人間が何かを(あるいは他者を)信じるプロセスは,人間の生活を根底で支える過程であると思えるので非常に興味深い。

 また,逆に,何かを疑うプロセスは,人間がこれをすっ飛ばしがちであるが故に,あるいはエラーを起こしやすいが故に,これまた実に興味深い。

 だから,より正確には,どうして疑うことができないのか,ということに興味があるのだと言うことができるだろう。

 そもそも人間にとっては,疑うことは難しい。

 なぜならそれがコスト,あるいはエフォートを伴うからである。

 そして,だからこそ,正しく疑う力,クリティカルシンキング(批判的思考)と呼ばれる過程を学生さん達には身につけて欲しいと思うし,そのための訓練は実は心理学を習得するための訓練と重なる部分も大きいと考えている。

 今回のお勧め本には,こうしたクリティカルシンキング的な考え方も満載されている。

 

 たとえば不思議な水,“πウォーター効能として,「πウォーターの中では肉が常温で六ヶ月間腐らない」ことが挙げられ,その理由として「πウォーターには殺菌作用も制菌作用もないが,生体エネルギーがあるから」と解説されると,

 

「ならば同じ生き物である菌はなぜ発展を阻まれるのか。」

 

と松尾氏は突っ込む(この,突っ込むという感じが重要である。あくまでも「否定派」ではなく「懐疑派」であるので,「肯定派」を論破することが目的ではないのだ。この,おもしろおかしく突っ込んでくれるところが個人的にも大好きなのである)。

 自然界の存在であるπウォーターという物質が,人間にとって都合が悪い生命体にだけ恩恵を与えない,というような区別をしている,というのは確かに納得のいかない話である。

 まぁ人間そのものは,自己中心性の強い生き物なので,たとえば,自然科学的な現象としてはまったく差異のない現象であるにもかかわらず,その結果が人間の役に立つものを発酵と定義し,役に立たないものを腐敗と定義して区別する,なんてことを平気でしてしまう。

 そうしたエゴセントリックな視点からは,このポイントにはなかなかに気づきにくいかもしれないが,腐敗は人間にとってこそ「都合の悪い現象」でしかないけれども,菌という生命体にとってみれば,まさに「繁栄の極み」であると言えるだろう。

 

 是非本書を自分の目で読んでみていただきたいので,ここでこれ以上松尾氏の尻馬に乗ることは遠慮しておく。

 が,(副題にも見られるように)おもしろおかしく読める,クリティカルシンキングの教科書としても本書をお勧めしたい。

 なんだか教育的配慮ばかりでお勧めしているみたいになってきたけれど,とにかく何よりおもしろいのである。

 研究室には置いてあるので,アクセス可能な人は,一度手にとってパラパラと読んでみていただきたい。

 いや,もちろん別に研究室でなくてもって話ですけど。

コメント (3)

死神:

私は読書が好きです。たくさんの本を読んで、いろいろな知識を得たいと考えています。
ですが…残念ながら、現在、この死神は、読書をすることすらできなくなってしまっています。
自分の読みたい本があるのに…集中力がなく、文章を理解することもできません。

川上先生が今回勧めてくださっている本も、是非読みたいです。読める気分になった時に、
川上研究室へ行って、お借りしたいと思います。
まぁ…死神なので、研究室へ行っても、私の姿は見えないかもしれませんが…。(微笑)
            川上先生のことが好きな死神より

川上:

ぜひとも見える姿であらわれて下さい(微笑)。
またお貸ししますよ。

死神:

ありがとうございます❤
            川上先生のことが好きな死神より

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