先日,某共同研究者(イギリスの小さなお城の姫である。あ,もちろんこれは比喩的表現であり,事実とは異なる)から,メ写(以前のブログ「写真を撮らない」参照)が送られてきた。
「ブーケ風花束」……f(^ ^;;
何というか,「ラーメン風中華そば」とか「ベスト風チョッキ」とか「タートル風とっくり」みたいなもんであろうか。
“みたいな”と言ってみたものの,そうした表現を見たことはない。
「あ,来週はテスト風試験をしま〜す」とか,授業で言ってみたいものである。
とかとか,とりあえず嫌みな突っ込みをくどくどしてみたが,ここでのポイント(突っ込みどころ)は2つあると思う。
1つ目は,「ブーケ風」と命名されているということは,まずもって,これはブーケではない,ということである。
マグリットの世界である。
すなわち,これはブーケに見えるかもしれないが,“風”というのは,あくまでもsomething like thatであると解釈すべきではなかろうか(この辺り,“貧乏性の人”が“貧乏”なのか?という議論と同質の議論であるような気がするが,定かではない)。
あ,もちろん“タイ風カレー”(音韻的には“激しいカレー”を想像させるが)とか“ミラノ風ドリア”とかの話はまた少し文脈が違うが,である(当然カレーやドリアがタイそのものであったりミラノそのものであったりするわけではないという点においては同様であるが)。
ともあれ,くどいようだが,“風”というのは,“女らしい”の“らしい”よりも,“女っぽい”の“っぽい”に近い気がするのである(この辺りも多分に感覚的な話であるかもしれない)。
つまり,これはブーケっぽい何かであるけれども,そう言っている限りはそれはブーケではないのである。
そして,それがして我々に「ブーケと花束は何が違うのか?」という根源的な問いを思い起こさせる結果につながるわけである(総意誤認効果であるかもしれない)。
2つ目のポイントは,この表現が用いられる背景には,おそらく“花束”より“ブーケ”が格上,あるいは上等であるとの判断が働いているのではないかと思われることである。
「カニ風味かまぼこ」みたいな感じである。
先日のレクチャー卓に関するブログ(「創造かもしれないけれど」)を書いていた際にも実は頭の中にあったのであるが,ここにはどうも“カタカナ語礼賛”のような感覚が透けて見える気がするのである。
文明開花か。
あまり関係ないが,「おかげ様ブラザーズ」というバンドの曲に,「Seven Gods of Good Fortune」というタイトルの“七福神の歌”があるが(ちなみにこの歌のおかげで七福神の名前が全部言えるようになった。それから“Six Gods and a Goddess”とするべきではないかという気もするが残念ながらそれほど英語が堪能ではないのでよくわからない),これなどはそうした感覚を逆手にとった笑いのセンスなのだと思う。
当然であるが,カタカナ語が悪い,と言っているわけではない(そんなことを言い出せば,これまで世に送り出してきた,数々の「カタカナ語に関する基準表」や「カタカナ語を刺激材料とした認知心理学的実験に関する論文」の立場がなくなるというものである)。
カタカナ語であるか否かにかかわらず,詳細な意味の吟味がなされずに「なんかこういう“感じ”のかっこいい言葉」という形で“語”が使用されているとすれば,それが問題であるのではないかと思うのである。
ここで言えば「“ブーケ”の方が“花束”よりもオシャレな概念」というような捉え方,ということになるだろうか。
自身が完璧であると言えるほどの自信はないので,天に唾することになるかもしれないが,やはり,こうした語の正確な意味に意識を向け,様々な使用(法)に“ひっかかる”感覚はずっと持っていたいものだと思う。
ということで,VOW的な話からスタートしたが,また例によってカタい展開になってしまった。
まぁ,大学のオフィシャルなブログなので勘弁願いたい。
一方では,オフィシャルなブログの割にずいぶんと好き放題なんじゃ…って話ですけど。

コメント (7)
「ラーメン風中華そば」とか「ベスト風チョッキ」とか「タートル風とっくり」とは、この「ブーケ風花束」
に対応した、ナイスな言葉ですね。少しウケました。
「あ,来週はテスト風試験をしま〜す」とか,授業で言ってみたいものである。
→→→言ってみてください❤少なくとも、私、死神は多少ウケると思います。
「“ブーケ”の方が“花束”よりもオシャレな概念」というような捉え方は、
多くの人の考えの中にあると思います。
川上先生のことが好きな死神より
投稿者: 死神 | 2009年6月18日 20:14
日時: 2009年6月18日 20:14
早速のコメントありがとうございます。
そして,“少し”ウケていただいてありがとうございます。
少し調べてみたのですが,やはり「ブーケ風花束」とか「ブーケ花束」
といった表現はWebには散見されますね。一般的には「似て非なるもの」
として扱われているのかもしれません。どんな重なり方をしている
概念だと捉えられているのかちょっと興味がありますが…。
投稿者: 川上 | 2009年6月18日 21:35
日時: 2009年6月18日 21:35
こんにちは。
1つめですが、「○○風」="**style"と捉えるのは
いかがでしょうか。
そして2つ目も、「花束」が「ブーケ」よりも広い
概念?と捉えることはできないでしょうか。
花が束ねてあったら花束だけど、ブーケというからにゃ、
みたいな。
(やっぱり「ブーケ」の方が格上みたいな。。)
な~ん、コリクツですね。失礼しました!
投稿者: た | 2009年6月19日 12:20
日時: 2009年6月19日 12:20
コメントありがとうございます。
コリクツを返させていただきますが,“style”という意味の
“風”は,本文中にも挙げた“ミラノ風ドリア”なんかや,
あるいは“矢沢永吉風の髪型”などがそれに当たりそうです。
で,ここではやはり,ミラノ=ドリア(本当は「ニアリーイコール」
と打ちたいのですが,なんか美しく見えないので「イコール」で
代用しました)でも矢沢永吉=髪型でもないところがミソだと
思います。ここではニアリーイコールのものが結ばれているのが
ポイントですね。
それから,やはり外来語には原語でのオリジナルな意味とは
別の意味が付与されていることは間違いないし仕方のないことだと
思います。机=デスク,であるのか,というような話ですね。
なので,おそらく現在の日本語における“ブーケ“に対して,原義の
“花束”以上(?)の意味が付与されていることは理解可能です。
ただ,ここで問題にしたいのは,外来語における意味のズレの
方向が基本的には「(日本語で表される場合と較べて)
よりオシャレな方向」であるということなのです。
なんか,結局思っていることを全部書いてしまいましたね。
侘び寂の感じられない感じになってしまいました。
そうしたことを踏まえて言えば,確かに最初の突っ込み自体が,
わかってやってるのでコリクツそのものですね…f(^ ^;;;
投稿者: 川上 | 2009年6月19日 20:22
日時: 2009年6月19日 20:22
私だけのとらえ方かも知れませんが
花束・・花をまとめたもの(広義)
ブーケ・・花束を飾ったもの(狭義)
というイメージがあります。
“花束”には子どもが野原などでシロツメクサなんかをいっぱいとるのも含まれ、“ブーケ”は人にプレゼントする等、花のみで構成されていない(ラッピングやリボンなどのある)ものを想像してしまいます。
ちなみにテスト風試験のお話ですが、テストは小テストや中間・期末や心理テストなど診断的な意味にとれますが、試験となると入学試験や国家試験など公式かつ難しい印象になるため、そういってはじめられると少しナメてかかりそうです;
投稿者: passerby | 2009年6月20日 10:04
日時: 2009年6月20日 10:04
侘び寂の感じられないところまでご回答いただいて
しまいありがとうございます。
勝手な解釈では、
・外来語は外国の新しい文化が入ってくるときに
日本語になる。
・日本人は外国の文化を日本の文化よりも格上と
捉える傾向がある。
・外国から入ってきた言葉も日本語よりも格上に
なる。
みたいな感じで思っています。
逆に外来語がほぼ同意の日本語よりも格段に"ダサイ"
例を探そうと思ったのですが、そううまく見つかり
ませんでした。
でも、そうオシャレでない例でいくと、
アップルジュースとりんごのジュースなんかはどう
でしょうか。別にアップルの方が非常に"オシャレ"
ということもないような気がするのですが。
アップル
リンゴ
りんご
林檎
とすると、逆に林檎の方が"オシャレ"志向で使われて
いるケースもあるような。
(デザイン性によりそうですが)
そしてさらに、ガラスと硝子とか、仮名と漢字の表記に
よって変わる気がして、外来語よりもワタシは漢字と
ひらがな、かたかなでついてくる言葉のニュアンスが
変わるのか、気になって眠れない、、って感じです。
マンガの吹き出しで、セリフの一部にカタカナを入れる
とか、そんなのを論じていたような気がします。
(たしかマンガ夜話?)
・・と、トリトメない、トメドない、オチもない、
与太話なので、この辺にしときます。失礼しました!
投稿者: た | 2009年6月23日 13:07
日時: 2009年6月23日 13:07
コメントありがとうございます。
>passerby さん
確かに,イメージが異なることは間違いないですね。
こうしたことは認知心理学的には非常に興味深い現象で,
同じ言葉を使って会話をしていながらそれぞれのイメージの
中ではまったく異なる世界が展開している可能性があるという
ことなわけです。考えるだに楽しいですね(^-^)。
>た さん
これも印象でしかないですが,
コーヒー と 珈琲 だと,後者の方がオシャレな気が
します。というより,後者が出てくる店は基本薄暗いですねf(^ ^;;。
そもそもcoffeeが外来語であることを考えると,「ひねる」ことで
オシャレ感が出る,という仮説も成り立ちそうです。
というか,なんかこのコメント群,コメントの域を超えてますね。。。
投稿者: 川上 | 2009年6月23日 22:01
日時: 2009年6月23日 22:01