年に数回,学会発表の機会がある。
最近ほとんどの学会発表はポスター形式になっているのだが,たまには口頭発表のセッションもある。
また,いろいろな講演とかシンポジウムでの発表となると,これは口頭発表ということになる。
そんなこんなで(どんな?),“口頭発表術”という言葉に惹かれて(どうも自分は“術”という言葉に弱いようである)買ったのが,以下の本である。
ロバート・R・H・アンホルト 著 「理系のための口頭発表術」 講談社ブルーバックス
買ってからわかったのだが,どうやらベストセラー的な本であるらしい。
さすがにこちらも立場としては学生の発表を指導している側であるので,「すべてが新しい情報だった!」というわけではないけれども,まとめ方の簡潔さや,細かい点にまで行き届いた配慮など,さすがと思わされる部分が多かった。
たとえば,資料(いわゆるパワーポイント)を呈示するスクリーンのどちら側に立つかによって,どちらの手で指示棒(あるいはレーザーポインタということになるだろうが)を持つのが適切かが異なる(つまりスクリーン側の手で持つのが正解),という辺りなどは,常々学生さん達に対して「聴衆の方を向いてしゃべりなさい」といったような大雑把な指示しか出していないことを反省させられた。
具体的な内容を一つ一つ挙げるわけにもいかないけれども(著者や訳者の方にも失礼であろう),こちらとしても改めて発表の仕方について,気持ちを新たにすることができたと思う。
そして何より,この本の素晴らしいところは,その語り口の軽やかさである。
研究成果の発表を念頭に置いているので,もちろん難解な箇所はそれなりに出てくるわけだが,全体的にはユーモアを含んだ(時には学者の楽屋落ちとも思われる部分もあるが)文体で書かれているのは,著者はもちろん,おそらく訳者の先生の努力も大きいに違いない。
やはりこうした語り口調で読みやすさが随分と違うのだ。
ゼミ発表や卒論発表にも役立つはずと,さっそく,ゼミ生に読むことを課した次第である。
ということで,人前で発表するつもりあるいは予定のすべての人に,本書をお薦めしておく。
特に,川上に(発表の)指導を受ける必要があるかな,と思う人は,ドラフトを作る前に,まずこれを読んでおいていただきたい。
結局は指導の手抜きをしたいのか,って話ですけど(えっと,これはもちろん言葉の綾で,指導の手抜きは決していたしません)。