真似とネタを区別する

 某日某所で複数の学生さんと談笑していた時のことである。

 とある学生さんから「先生,その物真似あんまり似てませんよ」(大意)というような突っ込みを受けた。

 それは結構衝撃的な突っ込みであった。「あまり似てませんよ」という部分がショックだったのではなくて,「物真似」という部分が自分としては衝撃的であったのだ。

 その時,具体的にはもう忘れてしまったのだが(忘れてしまった,と聞いて,「え,本当に衝撃的だったの?」と考える立場もあるし,「あ,忘れるくらい衝撃的だったんだ…」と納得する立場もあると思う),何かのネタ(たぶん「ルネサ〜ンス!」とかそういう類のものだと思う)を言ったのだと思うが,その際に学生さんから突っ込まれたわけだ。

 「え,物真似?」という感じであった。

 つまり,自分の中では,それは“物真似”ではなく,“ネタ”であるとの認識であったので,それを物真似という範疇で捉えられたことが,かなり驚きだったわけである。

 さて。

 そこで考えるのは,物真似とネタの区別である。どこからが物真似でどこからがネタとして認識されるべきなのであろうか(まったくもって考えなくても良い疑問であるが,それについてはここではこれ以上追求しない)。

 

 たとえば,相手の何かのコメントに対して「そんなの関係ねぇ!」と振り付きで返すことは,「小島よしおの物真似」ということになるのだろうか。それとも「小島よしおのネタをやっている」ということになるのだろうか。

 

 考えてみると,たとえば「ルネサ〜ンス!」というネタは,かなりお気に入りなのだが,これは自分としては“ネタ”として言っているつもりであって,けして物真似のつもりで言っているわけではない。

 ただ,少し微妙なのは,ネタとして「ルネサ〜ンス!」というためにも,やはりなにがしかの“「ルネッサ〜ンス!」らしさ”というものは必要だと思うので,“なんとなくそれらしい”的な言い方,つまり物真似的になってしまうのもまた事実である。

 この辺りが話をややこしくしていることは否めないが,いずれにしても,こうなってくると,どこかに線を引きたくなるのが人情というものではないか(世の中の多くの人はそうではないかもしれないが,少なくとも心理学系の実験屋はそうであると,個人的に信じている。総意誤認効果かもしれない)。

 

 さっそく近辺の学生さん達に問題提起をしてみるが,なかなかにスッキリしない。

 

 で,自分なりに,その区別をいろいろと考察してみた。

 まず,自分は物真似をしているつもり自体が希薄だというのはよくわかった。

 自分としては断じて真似をしているのではなく,ある“ネタ”を会話の中で使用しているに過ぎない。

 さらに,物真似というのは,文脈から切り離された行為だというのが自分の認識である。

「じゃ,物真似やります」というような文脈の中で,行われるのが“物真似”であり,そこでは類似性そのものがその“ウケ”を規定する。

 逆に言えば,文脈との適合性が“ウケ”るかどうかを規定するのではないということである。

 一方で,ネタについては,それを使うべきところで使うことによって“ウケ”が規定されるのではないか。

 たとえば,最近の流行である「あなたとは違うんです」であれば,たぶんそれを使うと“ウケ”る文脈というのが存在しうると思うので,そうした文脈で「あなたとは違うんです」と言えば,これはネタとして認識されるだろう。

 たぶん,それは物真似であるとは認識されない。

 そして,そのコメントを使うことそのものが“ウケ”るのであるし,さらに言えば,「ここでそれをもってきたか!」的な感覚がウケにつながるのではないかと予想される。

 つまり文脈の中に埋め込まれている以上は,これは“ネタ”と認識され,そして,文脈から独立して(あるいは「物真似やります!」という文脈に適合して)披露される場合に“物真似”と認識されるべきではないのか。

 

 とか結論めいたことを言っておいてからなんだが,たとえば「ルネサ〜ンス!」というネタは,適正な文脈というのが無いように感じられる,いわゆるカウンタ的なネタである。

 こういうのはどういう文脈に位置付けられると考えるべきなのか。

 適切な文脈がないとなると,このネタは常に“物真似”として認識される運命にあるのか。

 またもや混乱するのだ。

 

 例によってちっとも落ち着いた気がしないが,既にずいぶんと長くなってしまった。

 またどこかで蒸し返すこともやむ無しとして,今日のところはこの辺にしておこう。

 皆さんも,それぞれ物真似とネタの区別について,考察してみていただきたい。

 宿題か!って話ですけど。

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